PyCon JP 2026

「AI 法務代理人」— 韓国法令アーカイブと Python による実装レポート

法律ドメインにおける LLM 応用には固有の困難が存在する。事件発生時点で施行されていた条文を正確に引用する必要があり、判例は実在するものでなければならず、回答に含まれるあらゆる引用は厳密な検証可能性を要する。本領域においては、LLMの出力の「もっともらしさ」が、そのまま事故の温床となり得る。

本発表では、韓国の法令および判例を、公布日と Git コミット日付を対応させる形で版管理するオープンソース・アーカイブlegalize-kr を題材に、Python による「法務代理人エージェント」の構築過程について報告する。具体的には、(1) 法律 AIに固有のドメイン要件の整理、(2) 検証可能性を担保するためのシステム設計上の判断、(3)ハルシネーションに対する多層的対策の考え方、(4) 当事者として実運用した経験から得られた知見、を中心に論じる。

本発表が提示するのは、特定のモデルやライブラリの紹介ではなく、検証可能性を要請されるドメインにおいて LLMをいかに位置づけるかという設計上の論点である。法律を主題としているが、医療・金融・コンプライアンス等、誤りが許容されない領域への転用を視野に入れる。

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本発表は、発表者自身が刑事事件の当事者となった経験を背景としている。捜査機関の対応が必ずしも積極的に進行しない期間において、当事者が自身の事案に対する適用条文と先例の処罰傾向を把握しない限り、告訴・捜査の実質的な進展が困難であるという問題に直面した。
この課題に対し、発表者は legalize-kr およびprecedent-kr のアーカイブに依拠し、事件発生時点における施行法をGitにより再現したうえで、Markdown 文書の検索および Pydanticによる構造化を通じて、処罰可能性の自律的検討を行った。最終的に法律代理人を選任し捜査段階に移行したが、専門的支援にアクセスするまでの空白期間において、当事者自身が法令・先例にアクセスできる手段を確保することの重要性が確認された。
本発表は理論的検討ではなく、当事者として実装・運用した道具に関する実践的報告である。

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第一に、LLM を実運用に投入することを検討している Python エンジニアである。とりわけ、生成結果の正確性が業務要件として要請される文脈において、プロンプト工夫を超えた構造的対策を模索している層を想定する。
第二に、医療・金融・コンプライアンス等、誤りが許容されないドメインに従事し、ハルシネーションを設計レベルで抑制する方法論に関心を持つ実務者である。
第三に、オープンデータおよび司法アクセスの民主化に関心を持つ層、すなわち Civic Tech・Legal Tech領域に携わる開発者・研究者である。LLM および RAG に関する基礎的理解を前提とするが、法律ドメインの専門知識は要求しない。当事者性に基づく実践報告として、技術者のみならず、隣接領域の実務家にも示唆を提供することを意図する。

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Doyoon Kim

Hundreds LLC CTO。PyCon JP は今回が2回目。ただ技術を交換するだけでなく、技術と人をつなぐ場所に立てる人でありたいです。