PyCon JP 2026

スマホで撮れるコーヒー粒度計測ツールをゼロから設計・実装した話:AIエージェントとの協調設計から自動計測・推薦エンジンまで

家で飲むコーヒーの美味しさにグラインダーで挽いた粉の粒度分布が大きく関係します。「自分のグラインダーで今どんな粒度の粉が出ているか知りたい」。コーヒー愛好家なら一度は感じるこの疑問を、スマートフォン撮影のJPEG画像から粒度分布を自動計測するPythonツールGrindGuideで解決することを目指したプロジェクトを進めています。

本発表では、このプロジェクトを通じて得た「設計からAI機能実装まで」の実践知識を共有します。発表は大きく3つのテーマを軸に展開します。

1. テキストC4モデルで始めるAIエージェント協調開発
最初に設計書をMarkdownベースのC4モデルとして書くことで、AIエージェントとの実装の議論に明確な「共通認識」が生まれました。コンテナ・コンポーネントの責務分担が文書化されていることで、AIエージェントの実装過程の方向性確認や進捗管理がスムーズになった経験を紹介します。

2. Python × OpenCV × ImageJによる計測の完全自動化
スマートフォンで撮影した画像から、OpenCVでスケールを自動検出しpx/mmを算出、ヘッドレスFiji(ImageJ)で粒子を測定、KDEプロットと統計値を返すパイプラインをPythonで構築しました。手作業ゼロの計測フローの実装上の工夫を解説します。

3. データが育てるAIレコメンドエンジン
計測で蓄積した粒度分布・抽出条件・味プロファイルを知識ベースとし、抽出プロファイルの照合で最適レシピを提案します。コーヒーの抽出は方法も好みも多様で、一つの正解を出しにくい領域です。LLMによる根拠付きの説明の生成を組み合わせ、「この粒度ならこの淹れ方が合う」を理由とともに伝えることを目指しています。「データを生むサービスがそのデータで賢くなる」設計思想についてお話しします。

Tell us about your own experience with this topic

コーヒーマニアとして、嗜好品の「美味しさ」をデータとして捉えることに長年関心を持っています。言語化・数値化しにくい感覚的な価値をいかにデータに落とし込むかは、日常的なテーマです。

職業的には、インターネット上の言及からトピックを抽出する機械学習システムの開発を経て、現在は生命科学データの可視化・探索ツールの開発に携わっています。「データをどう活用し、有用なアウトプットに繋げるか」が一貫した軸です。

また新規事業の開発に多く関わってきた経験から、アイデアを設計に落とし込み実装する一連のプロセスを多く経験しています。今回のGrindGuideはその集大成ともいえる試みで、自分の苦手な領域も含めてコンパクトに一人で完結させることの面白さを改めて実感しました。

What discussions can you have with attendees through this talk?

3つの論点で議論を広げたいと考えています。

1つ目はAIエージェントを活用した小規模・一人開発の設計論です。C4モデルによる設計書がAIエージェントとの協働の起点となり、アイデアを一人で価値あるサービスとして形にする一つの進め方が見えてきました。同じようなアプローチを模索している方と話したいです。

2つ目は 計測・解析パイプラインの自動化 です。複数のツールを連携させて「撮影からデータ解析まで」をほぼ自動化する構成の考え方は、他の計測課題やコーヒー以外の領域にも応用できると思っており、AIエージェント時代の計測システム設計についての議論を期待しています。

3つ目は 感覚データとアプリケーション価値の接点 です。美味しさのような主観的・感覚的な情報をどう取得し、どう共有可能なデータとして扱うか。データと感覚を繋ぐアプリケーション設計の難しさについて、広く意見を交換できればと思います。

The speaker's profile picture
大石直哉

普段は生命科学データの探索と可視化ツールの開発を主に行っています
株式会社ドッグラン代表取締役